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スマ婚に関するオトクなお話

『R』は25〜34歳のビジネスマンをコアターゲットにしたフリーペーパーだ。 創刊当時、同誌の編集長だったF氏に何度かインタビューしたところ、独身王子がいかに慎重な人達か、改めて思い知らされたという。

たとえば、街角のラックに『R』を置いてその反応を見る、という創刊前のテストマーケティングにて。 同誌は、男性向けのフリーペーパー、表紙にも大きく「0円(無料)」と書いてある。 にもかかわらず、テスト段階では女性のほうが積極的に持っていき、男性は予想以上に手に取らなかった。 F編集長(当時)らは、慌てて「なぜ?」とヒアリングした。
すると、女性達が「タダなんだから、1つでも使える情報が載ってたらラッキーでしょ」「ダメもとで持っていったの」と無邪気に笑うのに対し、男性は「0円って書いてあるけど、本当にそうなのか信用できない」「もし(タダだと思って)間違ったら、恥をかく」など、驚くほど慎重だった。
人前で失敗するのが怖い、恥をかきたくない。 だから、興味があっても女性のように怖いもの知らずで、飛び込むことはせず、つい身構えて慎重になるわけだ。 そんな旧来の男性に比べると、草食系男子は自由でストレスフリー。 リラックスして女性に甘えるのも平気だし、失敗しても「やっちゃった」で切り抜けられる。 借金はしたくないから、クルマや住宅など大物はなかなか買わない。

でも「男たるもの、こんなモノは買わないほうがいいか」とたじろぐことはせず、女性が買うものとされていたファッションやコスメの分野にも、次々と手を伸ばす。 当然と言えば当然だ。
何しろ草食系男子には、元々「男たるもの」の概念自体がないのだから……。 そして、あと1つ。 女性寄りの草食系男子が「増えて当然」と思える理由がある。 いまいちど、F教授の著書『できそこないの男たち』を思い出して欲しい。 「男性の染色体(XY)は、生物の基本仕様としての女性の染色体(XX)を無理やり作り変えたものである」、との記述だ。
同著でF教授は、Bの有名な言葉をもじって、こう言った。 1人は男に生まれるのではない、男になるのだ。 そう、実は地球上に最初の生命が誕生した数十億年前、生物の性は単一で、すべてが“メス”だったという。 当時のメス達は、オスの手をまったく借りることなく、子どもを作ることができた。 2億年前から存在した「アリマキ」も、メスをカスタマイズしてオスを作る。 ヒトもこれと同じだった、というのだ。 F教授いわく、ヒトの場合、基本仕様としてのメスのプログラムをオスヘと分岐させるスイッチが、Y染色体上のSRY遺伝子だ、とのこと。

だが、このオスをオスたらしめるY染色体が、いま弱りきって「数百年後か、早ければ来週にも消えるかもしれない」危機に瀕している、というのだ。 これを明らかにしたのは、『Nスペシャル〜シリーズ女と男』。 番組ではY染色体自身と、それを運ぶ精子、この2つともが劣化している様子を、CGなどを使って説明していた。 まず染色体について。 女性の染色体(XX)は、コピー(子作り)の段階でミスがあっても、正常なほうのXがフォローするため、ダメージは少ない。

でも男性のY染色体は1つしかないので、傷ついた状態でどんどん子どもにコピーされていく。 そのため、すでに傷だらけで、弱りきった状態にあるというのだ。 一方の“運び屋”の精子のほうも、かなりヤバイ。 WHOが定義する、正常な精子とは「1回の射精につき2ミリリットル以上の精液量があり、1ミリリットル中に2千万個以上の精子があり、さらにその50%以上が運動性を持っていること」だとされている。 「1ミリリットル中に4千万個未満」だと、子作りへの危険信号が点滅、「2千万個未満」となった時点で赤信号、つまり子作りがほぼ不可能になる。 にもかかわらず、デンマークには「4千万個(不妊予備軍)」を下回る男性が4割、「2千万個(不妊)」を下回る男性も2割いて、平均でも4千数百万個。 実は日本の男性も、なんとデンマークとほぼ同レベルにある、というのだ。 大変な事態だ。

このまま正常なY染色体が減り続けていったら、やがて人類は終わってしまう。 恐竜のように、絶滅してしまうじゃないか……。 いや、そうとは言い切れない。 極論を言えば、「健康で妊娠可能な精子をもつ男性」がこの世にたった1人いれば、子作りは可能だ。 女性のように10か月間、胎児をお腹に入れて育てる必要もないから、1人の男性が次々と、違う女性との間に子どもを作ればいい。
枷になるのは、倫理観や一夫一婦制ぐらいだ。 また、番組の最後でも紹介していたが、最近は「精子バンク」の存在もある。 未婚の母が多いアメリカでは、すでにインターネットなどを通じて精子(冷凍保存)を手に入れ、結婚せずに子どもを作る女性もいる。

よく報道されるとおりだ。 まさに、究極の“エコな妊娠”。 これもまた、優秀で健康な遺伝子をもつ男性が、ほんの数人いれば成立する。 もし未来の絶滅を危惧するなら、いまから正常な精子をできるだけたくさん、冷凍保存しておけばいい……。 ただもちろん、これは極端な見方だ。
私個人が精子バンクを利用したいかといえば、したくない。 子作りは、あくまでも男女の恋愛の証。 単に精子だけがあればいい、という単純なものではないだろう。 だがここまで書いて、ふと思うのだ。 私はこれまで、草食系男子を「オンナ化した男子」だと思っていた。 様々な社会環境の変化(進化)によって生まれた、新種の超新人類だと捉えていた。 でも実は、その逆かもしれない。

男は、女の突然変異として生まれた。 もともと地球上には女(メス)しか存在しなかったし、男のベースにあるのも女だ。 だとすれば、草食系男子は「女寄りに進化した」のではなく、実は「元の姿に先祖返りしている」「あるべき姿に戻りつつある」だけかもしれない。 遺伝子段階でムリにカスタマイズされ、生まれてからも男たるもの論に縛られ、成人してからは「男は妻子を養うべき」と言われ、なにかと窮屈な思いをしてきた男性達。
その彼らが、いま男という呪縛から解放され、草食系男子として自由に振舞い、本来あるべき姿に少しずつ先祖返りしている、そう思うのだ。 このまま先祖返りを進めれば、彼らは何百年後かに女と同化してしまうかもしれない。 でも女寄りに器用に変異することで、少しずつムリを減らし、自然な状態に近づいているとすれば……草食系男子ほど、したたかでしぶとい生き物はないだろう。
草食系男子こそ、実は絶滅の危機にあるY染色体を延命させる“救世主”かもしれない。 彼らに「男たるもの」「据え膳食わぬは」と、再び“男らしさ”を強いるのは、意味のないことに思えてならないのだ。

6年前(03年)、アメリカの大人気ドラマ『SATC』を、初めてDVDで観たときの感想だ。 主人公のキャリー以下、登場するメインの女性キャラクター4人は皆30代のバリキャリだ。 シリーズ最初のシーズンTでは全員が独身、しばしばニューヨークのオシャレなバーに集まっては、口々にこう洩らす。

「あーあ、いい男ってどこにいるのかな」彼女達は、うらやましいほど優雅な独身生活を謳歌している。 最新ファッションに身を包み、華やかなパーティやオトナのバーに集う。 オンとオフのバランスをみずからのさじ加減でコントロールしながら、癒し系のひとりの時間を満喫し、男(ときにはゲイ)の友達とも適度な距離感で付き合う。
ずっと恋人がいないわけではないが、どうしても結婚したいほどの相手もいない。 「結婚?まあいつかはね」、そんな感覚だ。 奇しくも同じ03年、S氏が著書『M』で、このドラマを「負け犬の都ニューヨークを舞台にした『負け犬ストーリー』」と紹介した。



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